猫の研究 その1 「猫に学ぶ子育て」  2001年8月8日    

 「猫を知りたくば猫と暮らせ。」という言葉がある(猫社長作)
 同じことが「パソコンを知りたくば、パソコンと暮らせ。」ということになる。
いくらパソコンスクールに通っても自分のパソコンを持っていないと、身に付かないものである。

 小生は小学2年生くらいで猫と飼い始めることとなった。親戚が羽田方面で拾ってきたとか
いうメスの三毛猫である。余談になるが遺伝子の関係からかオスの三毛猫は極めて少ないと
聞いたことがある。子供のころの情報なので正確ではないことはご容赦されたい。

 科学少年であった小生は実によく猫を観察しては遊んでいた。猫にとっては小生はまさしく
ストーカー小僧で迷惑だったにちがいない。

 この猫は少なくとも生まれてしばらくは野良をやっていたと思われる。いくらかは野生の心が
残っている。人間の家庭で生まれ餌も安全もなに不自由なく育った連中とはちょっと違う。
 まず、家族以外には警戒心が強い。家の庭にうっかり迷い込んだ自分より大きな犬に対しても
あっという間にするすると近づき、鋭い爪と牙で顔面攻撃、瞬間的に勝負はついてる。次の瞬間には
トントーンと高い所に上り、上から威嚇している。負けたことはない。

 ネズミもよく捕まえた。家の中にその獲物を持ち込むのだが、母は夜中にぐにゃりと踏んづけて
大騒ぎ。大迷惑なのだが猫の仕事なのでしかることはできない。
 一度、姿のよく似ているモグラも捕まえてきた。ある程度食べてしまったようだが、体に合わないのか
すぐにおう吐していた。

 この野生の心を持った猫も子供が産まれ、子供が小さなうちは、まさに猫可愛がりをしている。
 段ボール箱の中に産んだ子供を一匹くわえてきて、小生の父が晩酌してるところへ連れてきて
父に子供を見せにきた。自分を可愛がってくれてる父には報告したかったのだろう。小生はストーカー小僧
だから、信用ゼロなんでしょう。見せにつれてはこなかった。

 母猫はじゃれあって遊んでるように見えながら、兄弟同士や、親子で格闘技のスパーリングをする。
 さらにもっとも大切な狩りの方法を教える。一緒にネズミの出そうな所に行く。
 そして自分がネズミを捕るところを見せる。その場に子猫がいない場合は獲物をくわえたまま、
鳴き声をあげ、子猫を呼ぶ。
 捕らえたネズミは全殺しにせず、まだ、少し動くくらいの半殺し状態で子猫に与える。
 最初ボケっとしてごろごろ横たわっていた子猫もこの獲物を見た瞬間、たぶんその臭いも含めて
いきなり興奮状態に入ってしまう。噛んだり、振り回したり、放り投げたり、落とされたネズミがピクリとでも
動こうものなら、再び飛びかかって攻撃を繰り返す。まさに猫がネズミをもてあそぶというやつである。
 こうして興奮の経験をすると実際に自分で狩りを始めるようになるわけである。

 子猫は自分で餌を取ることを覚え、体躯も十分大人になってきた約1才くらいであろうか。
 一緒に狩りにいった仲良し親子もある時から親が気変りしてくる。自分の子供を見かけると
実に不愉快な顔をする、時には「ハーッ」と威嚇する。たまたま道の出会い頭で親子が遭遇したり
すると、「ハーッ」と威嚇すると同時に親の方から、パンチ一撃を食らわすこともある。親猫は
苦虫をかみつぶしたような、鼻に横しわをよせる実に不機嫌な顔、子猫は「どういうこと? 
お母さん 僕にどうしてそんなことするんだよ。」と実にやるせないというか納得できないという表情をする。 
 人間からみたら「おまえ自分の子供の区別もつかないのか、もっと優しくしたらどうなんだ。
子供があまりにもかわいそうじゃないか。」といいたいところである。
これが何度かくりかえされるうちに、子猫は親元を離れ別の世界に旅立っていく。

 植物が自分の種をあらゆる方法で遠くへ飛ばしていく。あるものは綿毛を付けて風に運ばせ
あるものは鳥に食べさせ別天地でふんにまぎれて落とされる。
 猫も血液が濃くなり、劣性遺伝で種族が弱体化するのをさけるため、自分の子供を外へ
遠くへ追い出していく。

 人間はどうだろう。18−20歳くらいで、大学や、就職やらで親元を離れて一人暮らしを始める。
これは、たいへん理にかなっている。すべてを自分でやらなければならない。一方、就職しても
ずっと親元を離れない青年もいる。確かに家賃・食事代はかからないし楽である。テーブルの前に
座ればお母さんが当たり前のように食事を出してくる。休みの日には昼過ぎまで寝ている。
これが当たり前になってきて、少しでも思うようにいかないことがあるととたんに不機嫌になる
いわゆる「チョーむかつく」のである。会社がきびしくしごいてくれればまだいい。ちょっとしかっただけで
不愉快になって職が長続きしなかったりする。特別な目的もなくパラサイトになっていないだろうか。

 子猫が初めてネズミをくわえて異常に興奮するように、青春時代に将来の仕事の種となるようなことで
興味を持って興奮するものを見つけた者は幸せである。さらに、親元から離れて暮らし始めた者はさらに
幸せである。自分がより本当の自分に蒸留されていくのである。

 猫の世界ではほとんど父親は子育てには関係してない。オスはいったいどこで何をしてるのか。
第一子猫は自分の父を全く知らない。オス猫の仕事はもっぱら縄張り内のパトロールである。
 異常がないか見知らぬ猫が進入してないか、定期的に巡回する。犬も基本的には同じ仕事を
している。これは人間のビジネスにも適応できる。基本的に営業マンは自分のお得意先を
巡回してお客様がなにか困っていることがないか、自社以外の業者の臭いがないかどうか
をパトロールする。猫でもやってること、人間も学ばなければならない。

 次回は猫の研究 その2で 「禁じられた倒錯愛の結末」を書きましょう。それでは・・・