よもやま話 2002年6月17日
以前、三浦半島に小旅行した。突端は三崎港であり、まぐろ漁港として有名である。
遠洋からやってきた冷凍マグロは観光客向けに小売り市場がある。中トロのブツ切り
は価格も安くなかなかの美味であった。マグロを食べさせる食堂もそれなりに
充実している。
観光地としては特に期待してはいなかった。(実はマグロが目的)
こういってはなんだが、都心からも近いし小学生の遠足向き程度かなと思われても
しかたがあるまい。経済基盤を充実した漁業とすれば、特に観光に力をいれなくても
いいのかもしれない。
有料の橋を渡ると城ヶ島である。
「雨はふるふる、城ヶ島の磯に・・・」でおなじみの北原白秋作詞の曲
「城ヶ島の雨」の歌碑が橋のたもとにある。ユーミンやサザンならともかく今では
北原白秋が誰かも知らない人が多いかもしれない。
ここになんと北原白秋記念館(資料館)がある。ただでさえ観光客は来ないのに
しかも通りからすこし奥まった目立たないところに、さらに昭和30−40年台位の古びた
小さな建物、「こんなところに観光客が来るんだろうか。」と思いつつも、逆にどの程度
さびれているかを確かめたいという興味から入ってみた。
ところが意外や意外、この古びた小さな資料館に中年カップルや、ご老人、家族連れ
など、思った以上に来てるのである。もちろん置いてあるものは古い書籍や年表、資料
楽譜などわざわざ遠くからやってきてまで見るほどものでもない。
その秘密はすぐに分かった。それはここにいるたった一人の女性職員である。
いわゆる中年のおばさんというよりお母さんといったほうが適当であろう。
この人はふらりとおとずれた観光客に「暑かったでしょう」とか「遠い所からわざわざ・・・」
の言葉をかけつつ、インスタントではあるが無料の甘酒をすすめるのである。
たしかに歩き疲れて、ちょっとひと休みしたい観光客にはほっと一息の癒しである。
こんな人だから気もきくし、動きもてきぱきしている。地元の観光地にについても聞けば
親切に教えてくれる。
確かに古びた資料館ではあるが、この人がいるだけで生き生きと血が通っているのである。
企業や店もそこにいる人が生き生きと活動することで、繁栄につながるのではないだろうか。
自分もまだまだ努力不足かもしれない、むしろ努力ではなくそうした性格とか習性の人間に
ならなきゃいかんのであろう。