2003年11月10日   奇病 ギラン・バレーからの生還

 ようやくこれを書いてもいいかなという時期になった。昨年、小生の兄(59才)がギラン・バレー症候群という、珍しい病気にかかり、生死危ないところで何とか回復につなげ、今の時期で、全くの以前通りとは行かないまでもなんとか通常の生活ができるような状態になってきた。正直言って我が事の様にうれしい。

 この奇病はカゼなどをひいた時にこのカゼのウイルスを壊そうとして体の免疫力が発揮されるわけであるが、たまたま神経細胞がこのウイルスに構造が似てるため、免疫機能が自分自身の神経をウイルスと誤解し破壊活動を行なってしまう病気である。

 症状は手足など末端から激しくしびれてくる(痛みも相当のものらしい)。ヒザから下など力が入らなくなり立っていることも出来なくなる。テレビで狂牛病の牛がよろけて転倒するのをご覧の方も多いであろう。まさにあれの人間版のようなものである。
 とにかく発症してから進行が速いのがおそろしい。最初は手足から次第に体全体に及ぶ、神経が末端から体中央に向かって次々壊されていく、やがて呼吸もできなくなる。人にもよるだろうが、おおよそ10日位で死に至ることもあるとのこと。

 小生の兄は自力呼吸が出来なくなり、人工呼吸器をつけるところまでいった。病院に見舞いに行ったときには、ほとんど動けず、口から管を入れ強制的に呼吸を行なっている状態であった。 その様子は、まさに我が父の最期の姿であった。「これはもうだめか・・・」 幼きころ兄弟喧嘩をしても、まったく歯が立たなかった大きくて強い兄が、なんと情けない姿になったものか、くやしさで胸がはりさけるようであった。

 気をとりなおして、インターネット検索でこの病気について調べてみた。分かったことがいくつかあった。ガンマグロブリンの投与という治療法が確立していること。回復後の再発率は少ないことなど、また、患者の闘病記などをみると歩くまで回復できずに、車椅子生活になった人もいるなど・・

 つまり、適切な処置をすれば「直る」のである。希望が出てきた。医者が例の少ないこの病状を早期に喝破できるかどうかが生死をわける。もし別の医者にかかり、わけも分からず、痛み止めと栄養剤の投与だけであったら、それこそ10日であの世行きである。幸いなことに主治医はこれを診断できたのである。この主治医とのめぐり合いは、本人の強運としか言いようが無い。

 正直なところ、闘病記などの例から車椅子生活も覚悟していただけに、以前のようにとはいかないが、自力で歩け、短い距離なら、自動車の運転、会社に出て仕事もできるようになってきた。上出来である。

 神経を破壊とはいっても、脳障害はなかった、体が以前のように俊敏に完璧に動かない分、口の方はこれまで以上に動きすぎるようになったのが家族の悩みとか・・・