2004年7月20日 オーディオ魂がふつふつと・・・

 小生は少しばかりのオーディオマニアである。パソコンを生業とする前、すなわちパソコンというものが世の中になかったころは、男の趣味といえば、スポーツを除けば、車、オーディオ、アマチュア無線などがあった。着るものにこだわる奴はいなかった。だからこんな時代の男からみれば、ブランド物の洋服でコーディネートしている青年のファッションなど全く理解できない。ラッパーと称する連中のファッションなどは、昭和30年代 貧しくてちゃんとしたスキーウエアが買えない少年がなんとか、防寒用におっつけた服装に見えてしまう。スキーウエアを着たお金持ちの少年が、あるいはお姉さんがまぶしく見えたものである。

 当時の男は着るものにはこだわらなかったが、自分の趣味のものには色々こだわりがある連中も多かった。
 この中でオーディオに関してはもっとも女には分けのわからぬものであったろう。女のオーディオマニアなどこれまで聞いたことがない。

 まず、単にレコードやCDを聴くにいくつものアンプと場所をとる大型スピーカ、あちこちのスイッチを操作して、音を出す。機械に弱い女といっては失礼になるかもしれないが、こういう操作は女は苦手のようだ。ラジカセやミニコンポでCDを入れてボタンひとつで音がでればそれでいいのだといわれてしまえばそうかもしれないが、出てくる音質は失礼ながらラジカセとは月とスッポンほどの違いがある。

 いくつものアンプ、スピーカが何個かゴロゴロ、ピックアップカートリッジが何個か、「あんた、これみんな必要なの?使わないのはリサイクルショップにだせば?・・」
 一つ一つに思い入れをこめ、少しずつ買い集めた機器、購入のときのお店のオヤジとのやりとり、音出しをした時の感動と落胆、この青春の涙のしずくを簡単に扱われたのでは、たまったものではない。かといって、一つ一つを説明したところで女に理解させることなどできないことは自分が一番よく知っているのだ。だからオーディオ機器は結婚前に買い揃え、結婚したらいっさい増設・増強しないことにしていて・・幸い若いころのように無性にこれ欲しいとか思わなくなってきたのも事実である。

 そんな中、当時集めていたレコードをCD−Rに記録して保存しておきたいという考えが頭をもたげてきた。聞きたくてもアナログプレーヤが十分ではない。当時使用していた機器をひっぱり出し分解整備し音が出るようになった。

 最近、通販でレトロデザインのレコードプレーヤなどが売られているが、いっぱしのオーディオマニアからすれば、そんなせこい装置で再生するなど言語道断・レコードに対して失礼である。重い針圧の丸針、セラミック発電のピックアップなどレコードを傷めるに決まっている。

 とりあえず、ちゃんとしたレコードプレーヤで音は出るようになり、パソコンを接続してCD−Rに記録できるようにもなった。しかし、比べても仕方がないと思っていたが、最近のCDから出る音と、LPレコードから出る音を比較すると音質に差があるのである。レコードはレンジが狭いように聞こえる。レンジとは低い音から高い音まできれいに伸びてるか、小さな音が回りにもぐらずクリアに再生され、さらに大きい音まで全く崩れずに再現できるかということである。一般に周波数レンジ、ダイナミックレンジといわれている。これがどうも弱い。

 これは、レコードに入っている音源がそうなのか、あるいはピックアップカートリッジのレンジが狭いのか。現在使用しているのはそれこそ30年位前のものである。レコードの記録方法を変えることはできないが、ピックアップカートリッジを変えることはできる。

 店からアナログレコードが消えてしばらくたった現在でも依然としてピックアップカートリッジを生産しているメーカーはある。もちろん文句なしの一流ブランドである。CD時代のアナログピックアップカートリッジを使用したらどうなるのだろうという欲望がふつふつと頭をもたげてきた。

 デンマーク製オルトフォンのMCカートリッジで程度のよい品が入手できた。音出しをする。最初はこんなものかなと思っていたが、何枚かの聞き込んだレコードを再生すると確かにレンジはぐんとひろがっている。低音も深く、すべてがクリアーである。マグネットがアルニコからネオジウムに変われば音が格段に改善するのは当然で超強力な磁界の中では、コイルのわずかの振動も余すことなく電気に変換されるのだ。CDと比較しても引けをとらない。いい買い物だと思った。

 アナログレコードはよく録音されたものであれば、その溝からかなりの情報がひきだせる。けっして捨ててしまうような無価値なものではないのが、改めて認識させられたのであった。