2005年5月23日 哀愁のガタン!

 先日、回転寿司に行った。オール100円の庶民的な店である。この100円寿司といえば、何社かあるが、初めて入ったこの店(K寿司)はシステムがかなり自動化されている。
 通常は、コンベアのそばのインターホンで、厨房の職人さんに、好みのものを声で注文する。ところがこの店はタッチパネル液晶モニターがあり、イラストアイコンをタッチして注文する。確かに騒がしい店内で、インターホンに向かって声を張るのが恥ずかしい女性にはいいのかもしれない。

 夜も更けたころ入店し、厨房近くのカウンター席に案内された。初めて見るシステムに、程なく慣れて、注文操作も問題はない。贅沢を言えば、液晶表示の寿司の絵がもう少しクリアーになっていれば分かりやすいのにと感じた。

 腹を減らしていたので、バクバクと食べていたのだが、時折「ガタン!」という大きな音がする。最初は気にしていなかったが、客も減り、食べるペースも落ちついてきたあたり、次第に気になってきた。
 その音はちょうどコンベアのはす向かいから生じていた。通常は寿司皿がコンベアによって移動しているのであるが、たまに、「ガタン!」という音とともにコンベアの床面が下に脱落し、寿司が皿ごと落下させられる。

 はーんそうか!寿司皿にはセンサーが入っており、たぶん握られてコンベアにデビューしてから一定の時間が経過したものはこの脱落機能で、下げられているのだろう。確かに長い間コンベアに乗っていながら、客が手をつけないままでは、表面は乾燥し、鮮度も落ちてくる、見た目もそれと分かるから、客は益々敬遠する。したがって、ある程度時間の経ったものは、退出するのは当然であろう。通常は店の職人さんが、判断して廃棄したのであろうが、この店はシステムが自動的に処理する。

 よくできているこのシステム。しかしこれを見ていて、すこし悲しくなった。この皿に乗っているのが寿司でなくて人間だったらどうだろう。最初はフレッシュな気持ちでコンベアにデビューしたものの誰からもお呼びがかからず、やがて干からびた姿になり、皆から無視され、疎まれ、オレの人生もこんなものかな考え始めたころ「ガタン!」と奈落の底へ・・・
 せめて「ご苦労様」の一言でもあれば少しは救われたのか・・・

 すこし首筋が寒くなってきた。さっさと勘定を払って、帰路につく。
 せめて「ガタン!」の場所は客から見えないところにあってほしい。でも実態は同じなんだよね。

 人生いつ「ガタン!」が来るか分からない。もうこの歳となれば、妙なヤセ我慢は無用だ。食いたいものを食い、会いたい人に会い、せめて美しいものだけを見つめて暮らしていければいいんだけどなぁ。