「どこよりも安く」という 麻薬に蝕まれ

 
耐震偽装のあの事件、今度は某ホテルで建築確認後に部屋数を増やす違法増築工事。どうしてそんなことするのとお怒りの方々の気持ちはよく分かります。
 どうしてそんなことをするのかといえば、鉄筋を減らすことによって、材料費はもちろんのこと、工数(作業)を減らせることにより、工期も短くなり、全体として大幅なコストダウンが図れる。
 逆にいうと、販売物件を「この内容で、お安いでしょう。」とセールスできる。しかしこの低価格で販売すると通常に建設したのでは利益がでません。そのため建設コストを下げるために、危険領域まで鉄筋を減らしちゃったわけです。

 地震はすぐには来ないだろうし、見た目がカッコ良けりゃ素人には分からないだろう。こんなもんでいいんじゃないですか。という意識はあったのだろう。
 設計事務所としては、上請けからの「安くやれ」の圧力があったという。
 逆に元をたどれば、エンドユーザーが何がなんでも安くしてくれ、同じ仕様なら安い方を選ぶという。まあ、当たり前といえば当たり前だが、常識を超える値引き圧力をかけていることも事実であろう。

 自分さえ安く買えれば、その店がつぶれても知ったこっちゃないという利己主義集団に日本人は陥ってる。株式取引でも、ミス発注があると、それに乗じて儲けようとする。数年前もインターネット通販の価格ミスで、異常な発注をする事件があった。ミスを見つけて、突き飛ばし、ちゃっかり儲けるやり方は紳士とはいえない。

 製品を中国で作ると驚くほど安く作る。日本の工場で生産するとコストが合わないので競争できない。やがてご存知のとおりの産業空洞化が起こってくる。お金儲けの近道は企業買収と転売で研究も開発も生産もしない、これって何なんだ。

 翻って、パソコンの話としては、確かに巷には異常に安くパソコンを販売している業者がある。パソコンの仕様としてはCPUクロックや、ハードディスク容量など、いくつかの項目がある。確かに当社もオリジナルブランドのPCを製造販売しているが、部品価格の合算より安いパソコンが売られていることがある。

 PCの仕様をそれだけでみていいのかということもあるが、小生の経験で、ハードディスクとメモリだけは高信頼性の部品を使うことにしている。なぜなら、記録した内容が読み出せなくなったときは被害甚大だからだ。

 現在デスクトップ機にはSeagate製のハードディスクを使用している。信頼性で評価は高い。パーツメーカーとしてはここだけは自信の5年保証だ。

 それと実際毎日手に触れるのはキーボードとマウスだ。まあ、このあたりもあまり安いものはキータッチと信頼性で不満がでるだろう。少なくともそこそこのクオリティは確保したい(マイクロソフト製)。

 さらに、例えば故障した場合、いつもの地元のお得意様なら、参上してサポートすることもあるだろう。そう考えるとパソコンの金額が理由のある金額にならざるを得ない。これをリーズナブルな金額という。この仕事を長くやってると確かに無茶な値引きを要求してくるお客様もいなくはない。しかしながら鉄筋の本数を減らすような手段は後でさらに苦労することになるのであんまりやらないことにしている。(えっ!あんまりやらないということは少しはやるってことですか?) 余計なツッコミはやめてください。