アメリカでのホームステイ

 学生時代、夏休みに、米国でホームステイしたことがある。プール付き
の家だ。それを聞くと普通の日本人なら「え、なんという豪邸、セレブか?」
と思ってしまう。ところが、極普通の一般的な家庭で、実はロスの夏は暑い、
暑いから涼をとるために、プールに入る。実は家にはエアコンがない。
ちょっぴり豊かなおじいちゃんの家は、プールは不要だが、エアコンはある。
 車は当時の赤いマスタングと濃緑のポンティアック。マスタングはオープン
タイプ、幌は白で、幌をつけた時の配色もかっこいい。
ロスのフリーウエイを風を受けながら走る。はたからから見れば実に気持ち
よさそうだ。ところが、三角窓を調整して風を体に受けるようにしても、全然
涼しくない。エアコンは・・壊れている。
 オープンカーよりも、屋根のあるセダンでちゃんとエアコンが動作した方が
快適に決まっている。オープンカーは伊達男のナンパ道具かもしれない。
(あ、オレのことか?)

 さて、帰国が近づくと、仲間の日本人達は、土産を買い集める。女の子
たちは「ヴィトン、セリーヌ」などのブランド物。ホームステイの家族達も
どんなの買ったの?見せてとなる。そこでこの「セリーヌ」などのバッグを見せると
目を見開いてビックリする。「なんて素敵なの、ものすごくなめらかで、美しい。」
確かにトップクラスの品質は賞賛に値する、女だったら誰でも欲しがって当然だ。
 それで、このプール付きの家でマスタングに乗っているアメリカ女性はどんな
バッグを持っているのかというと、なにかインディアンの手作りのようなバッグを
使っている。
 ブランド物なんか持っていないのだ。品質は比べるまでもない。そのとき何とも
言えぬ複雑な気持ちだった。
 日本人は普通の製品より数倍も高価などこどこの何を持ってるかで自分のレベル
を上げようとしている貧しい国民、それを見透かされてるようで恥ずかしかった。

 あのころのハマトラの女の子達は今ごろどうしているのだろう。この歳になっても
ブランドでもあるまい。自分の過去の栄光は、ちょうど自分の娘に譲り渡す頃だろう。
 自分の服は「のとや」で十分満足だったりして・・。