幼児向きの童話・・


 恥ずかしながら、我が娘は当方50過ぎてからの子で、現在4才になったばかりである。
これが、寝る前に「お話して!」ということで、今までは絵本を読んであげたりしていたが、
「シンデレラ」「花咲かじいさん」などで、やがてネタは尽きてしまう。そこで次のような創
作童話を話してあげたら、大いにうけて本人も話を次々アレンジして創作し、いい脳トレにな
っているようだ。幼児向けなので感情をこめて、大げさに表現するといい。
絵本のようにあえて絵を出さず、寝る前の寝室の暗闇で、頭のイマジネーション能力をフル
活用することができるようになる。こんなお話である。

 題 「あいちゃんと猫ちゃん」 作 猫社長

ある日、みさきちゃんは お父さんといっしょにペットショップの「コジマ」に行きました。
そこにはケージの中にかわいい子犬や子猫がいました。
「わー、かわいい!」みさきちゃんはシマ模様の子猫のところで立ち止まりました。
「ねえねえ、お父さん。この猫かわいい。買って。」
「みさき、猫を飼うのはいいけど、ちゃんとウンチをかたづけたり、ご飯をたべさせたり、面倒
みられるのか?」
「大丈夫だよ、みさき、ちゃんとトイレ掃除とかやるよ。だから買ってよ。」
 お父さんは少し困りました。ちゃんと面倒みるかどうか心配です。さらに、値段が高かったら
「買えない」と言おうと思っていました。
 ケージに貼ってある金額を見たら5万円でした。昔から猫などどこかでもらってくるか、拾っ
てくるかでお金を出して買うことがもともと信じられない人だったのです。
「うわ、5万円もするのか。」お父さんはわざとびっくりしました。
「いらっしゃいませ。」ペットショップのお兄さんがやってきました。「ご覧になれますよ。」
お兄さんはその猫をみさきちゃんにだっこさせました。
「うわー、すごく柔らかくて、あったかくてかわいいー。」みさきちゃんは大喜びです。
 子猫はみさきちゃんの指を手で抱えてなめました。
「わたし、絶対この猫欲しい・・、お父さん買って」「しょうがないなー、ちゃんと面倒見るん
だぞ。」「うん、かわいがるよ。」
 お父さんはペットショップのお兄さんと話をして、この猫を飼うことにしました。

 あいちゃんはみさきちゃんの家へ猫を見に行きました。「この猫ちゃんかわいいね。」
「あいちゃん、だっこしていいよ。」みさきちゃんは猫をあいちゃんにだっこさせてくれました。
初めてだいた猫はふわふわであったかい。眼は丸くて大きい。手足の裏にはかわいい肉球があり
ました。きもちのよい柔らかさ、そして、時々爪が出てきてチクチクしました。
 あいちゃんは家に帰ってから、初めてさわった猫のことをお母さんに話しました。

 ある日、あいちゃんはみさきちゃんに言いました。「ねえ、今日また猫を見に行っていい?」
みさきちゃんは言いました。「もう、猫ちゃんはいないよ。」「えーっ!どうしたの?」
「あの猫ちゃんは、病気になって、鼻水が出て、目やにが出て、そして、毛が抜けてきて、
きったなくなったので神社の裏に捨てたの。」
あいちゃんはびっくりしました。「えーっ、かわいそうだよ。」

 あいちゃんは神社の裏に行きました。そこにはお堂の下の雨のかからないところに段ボール箱
があり、その猫がいました。箱の底にはタオルが敷いてあり、そこで、猫は寝ていました。
元気はありませんでした。あいちゃんはその箱ごと家に持って帰りました。

 お母さんはいいました。「どうしたのその猫?」「これはみさきちゃんが病気になったから
といって神社の裏に捨てた猫。かわいそうだよ。ずっとそのままだと死んじゃうよ。」
 あいちゃんとお父さんはこの猫ちゃんを動物病院に連れて行きました。注射して、薬を飲ませ
たらだんだん、元気になっていきました。この猫はすっかりあいちゃんになついていました。
猫には「あや」という名前を付けました。

 しばらくしたある日、みさきちゃんはあいちゃんの家へ遊びに来ました。みさきちゃんは
猫を見つけました。「あれ?この猫は?」「神社の裏で死にそうになっていたから、つれてきて
動物のお医者さんに見てもらったの。そして元気になったよ。」あいちゃんはその猫を抱きなが
らうれしそうに言いました。あいちゃんは、みさきちゃんも喜んでくれるものと思ってました。
ところが・・ みさきちゃんはその猫があいちゃんの腕の中で気持ちよさそうに抱かれているの
を見て、急にムカついてきました。
「あいちゃん、その猫は元々私のお父さんが5万円で買ってきたものよ。返して!」
「えーっ、だって、みさきちゃん、この猫は病気で、鼻水が出て、毛が抜けてきったなくなったから、
捨てたんでしょ!」あいちゃんは言いました。
「何いってんの、これは元々ウチの猫だから返してもらうわ!」

 みさきちゃんはだっこしているあいちゃんから猫を奪おうとしました。あいちゃんも必死で奪わ
れまいとしました。みさきちゃんは猫の腕をつかんで引っ張り、あいちゃんは足をもって取られ
まいとしていました。お互いに引っ張るものだから猫は痛がって「ニャー」と叫びました。

 あいちゃんは猫が痛がってかわいそうなので、つかんでいた足を放してしまいました。
 みさきちゃんは猫をつれて帰ってしまいました。
 猫のいなくなったあいちゃんの家は寂しくなりました。

 さて、猫をとりもどしたみさきちゃんはとりあえずそれで満足でした。ある日ノートパソコン
の上に猫がいるのを見かけました。猫はキーボードの上が好きです。でこぼこしたキーボードの
上では手足の肉球にほどよい感触、横になってもキーにマッサージされているような気持ちにな
ります。みさきちゃんはパソコンを使おうとしたらなにか水のようなもので濡れていました。
 「あ、猫がパソコンのところでオシッコをしたんだ!」「こらっ!」みさきちゃんは怒って
猫をぶちました。猫のいる家ではノートパソコンを使わないときは画面を閉じておかないといけ
ません。 
 たたかれた猫は「ニャー!」といって窓の外へ逃げ出していきました。

 あいちゃんの家では、猫ちゃんがいなくなったので、あいちやんは元気がありません。
ある日の朝です。ドアの外で「ニャー」という猫の声がしました。ドア開けるとそこには
猫の「あや」がいました。あいちゃんは猫を抱きしめて言いました。「もう、誰にも渡さないよ。
ずっといっしょだよ。」
                        おわり

 余談ですが、登場する人物と猫を大人の男女にすると、安い恋愛ドラマになりますね。好きだ
嫌いだは大人でも子供でも永遠のテーマでなんでしょう。