クイズ王と東大生

 学生にとって、テストの成績が良いことは何事にもまして関心事である。小生、大学生時代に
学習塾で中学生を教えていたことがあった。

私 :「みんな!頭よくなりたいか?」
生徒:「なりたーい!」
私 :「じゃあ、一生懸命勉強すればできるようになるぞ。」
生徒:「先生、それができないから、こまるんですよ。」
私 :「ということは、つまり朝起きたら、急に頭がよくなってて、どんな問題も不思議なく
    らいにスラスラできるようになっている。こういうことか?」
生徒:「そうそう、それそれ、それが一番!」

 小生の兄が小学生高学年くらいだったろうか、「オレは頭の良くなる薬を発明した。」と
のたまって薬包紙に包まれた粉薬を見せてくれた。「これを1日1回飲めば絶対頭が良くなる。」

 その薬の成分の詳細は覚えてないが、だいたい次のような成分である。
・青のり
・鰹節パウダー
・アミノ酸(つまり 味の素という化学調味料)
・その他 なにか色々。

今考えてみれば、一応、頭に良いとされている食品を混ぜたサプリメントのようなもの、少し塩
を加えれば、ご飯においしいフリカケかもしれない。

 家族は「こんなの効くのかね!」と半笑いの生温かいまなざしでその効果を見守っていた。

 ところが、その後兄は「効果が実証された!」「見てみろ、前より成績があがっている。」
とテストをみせた。確かに効果はあった。

 要するに自分で発明した「頭の良くなる薬」が効くことを証明するため、いや「効果が無いじゃ
ないか、ハハハ!」とバカにされないために、勉強したのであろう。
 
 さて、先日バラエティ番組で「息子全員を東大生にした母親」というのをやっていた。ちょっと
見たが確かに、学校から帰ってきてから眠るまでの時間、びっしりと勉強スケジュールが作ってあ
り、ほとんどの時間を参考書や、問題集などに費やしている。確かに東大に合格するということは
並大抵のことではない。勉強以外の物をかなぐり捨てて、全部を学習時間にささげるくらいでなけ
れば東大は無理だろう。小生だってできることであれば東大に入りたかったのだが・・数学、物理
はまあまあ水準に達していたかもしれないが、確か当時は国語とか英語とか文系の科目もあって、
そうなると総合ではとても合格ラインはムリなのであった。とくに小生は社会科の歴史などはかな
りニガ手であった。一生懸命ゴロ合わせで年号を覚えるのだが、中々覚えることができない。

 当時に歴史が異常にできる友人がいた。「お前、なんでそんなにできるんだ?どういう勉強
をしてるんだ?」くやしまぎれに聞いたことがある。「試験前に教科書を2−3回読むだけだよ。」
 なんと・・それだけかよ、オレがあれほど努力してるにもかかわらず・・ と思った。

 今になって考えてみれば、学校の試験は基本的には教科書の指定された範囲から出題される。
つまり頭の中に教科書がすべて記憶されていれば、できて当たり前。答案用紙には記憶された
事を書き写すだけということだ。つまりあの友人は頭がいいという事とは別に、おそろしく記憶
能力が高いことは間違いない。

 人間に背の高い人、低い人、駆け足の速い人、遅い人がいるように記憶能力も持って生まれた
キャラクタと思われる。小生が例えば1ケ月間、一流の先生に習って、死ぬほど頑張っても、ボルト
選手には絶対に負ける。命がけで戦っても、三流プロレスラーにも勝てない。
 少なくとも東大生になるためには、一度読めば、頭の中にスラスラ記憶できる能力は必須のよう
だ。

 さて、クイズ王の話であるが、これもタモリ倶楽部というバラエティで紹介されていた。クイズ
王がなぜすごいのか、問題が少し読まれただけで、即座にボタンを押し、回答する。もちろん正解
だ。例えば「滋賀県では・・」ピンポーン 「○○○です。」 正解です! ウワー!驚きの喚声
が上がる。「これはどういうことなんですか?問題は最後まで言ってないよね。」タモリが聞く。

 これについてクイズ王の回答がこれだ。「こうしたクイズは時事ネタとか色々あるが、出題される
ネタ本がある。そこで例えば 滋賀県では ときたら もう答えは琵琶湖とかきまっているのだ。」
つまりクイズ王はそうしたネタ本や時事ネタを日々記憶しているので。最初のフレーズが来た段階
で、もう答えは分かってしまうのだ。

 小生流イヤミな言い方をすれば、「ふーん、頭の中のデータを検索してるだけじゃん。たしかに
オレの頭よりデータ量は何倍もあるかもしれないが、グーグルには負けるんじゃないですか?」

 六法全書を記憶して、その中から出題される司法試験。やはり記憶力抜群の人は強い。また裁判
では過去の判例から量刑を下す。これだって、コンピュータに法律と判例を入れて、AIコントロー
ラをつけたら、弁護士も裁判官もいらない。

 頭のいい人と呼ばれる中にはこの記憶力が抜群の場合が多い、東大、ハーバード、医師免許も
取っちゃって相当頭がいいので、新潟県知事になって、援助交際がばれて首が飛ぶ。うーむ
援助交際がいけないとは、教科書に書いてなかったのが悪いのね・・・・

 本当に頭のいい人とは教科書やデータに無いことが生じたときに正しく対応できる答えを見つけ
る能力ではないだろうか。そこのベースにあるものは限りなき人類愛であってほしい。
 そう考えると、輝いて見えた東大生とか、クイズ王とかが少し色褪せて見えてくるのではないだ
ろうか。

 こうしてみると「カネ儲けのうまい人」「そうでない人」などは必ずしも頭の良し悪しでもない。
どちらかというと小生は「カネ儲けは下手」である。でもお客様のPCを健全にベストの状態に
したいという熱情はもちろんある。これが必ずしも「カネ儲け」につながらないことが悲しい所だ。