小生は酒を飲みません

 小生は酒を飲みません。飲めない訳ではないが、自ら飲みたいとは
思わない。ワインよりは上質な葡萄ジュースの方が好きというお子ちゃま
なのかもしれない。安い酒と高い酒、確かに高い方がおいしく感じられ
るが、その差がよく分からない。つまりアルコールのおいしさが分から
ない。酒好きな者から見れば人生半分を損していると言われるかもしれない。

 ちなみにトランプ大統領も酒は飲まないらしい。聞いた話では、兄だか
親戚だかアル中の人がいて、それを見て、オレは一切酒を口にしないと
誓ったとのことだ。

 お酒については、小さい頃からの母の影響があるのだろう。小生の父は
無類の酒好きで、毎日夕方5−6時くらいから始める晩酌は父の人生の一部
であった。枝豆や、刺身などちょっとしたツマミを用意してまあ長時間か
けて飲む、おおよそ10時くらいまで飲んで、あとは眠りにつくわけだ。
よそのお姉様のいる店で飲むわけではないので、基本的にコスパは悪くな
い。相手はテレビである。母とはそれほど語り合うほどでもなかった。

 根本的に酒そのものが好きなのと、多少のアルコール依存症もあった
のかもしれない。なぜなら夕方になると、微妙に手が震えていた。性格は
おとなしく、依存症といったところで人に迷惑をかけることのない健全な
タイプである。父のアグラの上に陣取った猫は刺身のおこぼれをいつも虎
視眈々と狙っていた。そっと手を出す猫は、パンと頭をたたかれていた。
 

 毎日積算すれば膨大な時間を飲酒に費やす父を見て母はふがいない男だと思っ
たのだろう、小生には、小さい頃から「酒は飲むな、酒は飲むな」と呪文のよ
うに言っていた。何も期待されない、何もすることがない男がやむを得
ず飲酒に逃げ込んでいるとも考えられるが、そうではない。父にとって晩
酌はかけがえのない楽しみなのだとしか考えられない。今この夕方の晩酌
時間は小生は事務所で仕事の時間になっている。小生仕事そのものは嫌い
ではないので考えてみれば晩酌で喪失してしまうだろう時間が有効に活用
されていると考えられる。もし仕事そのものが棒を飲むようなつらい物なら
飲酒している方がマシなのだろう。

 しかしだ、飲酒に長時間を消費している父に対し、小生は父より多くの
財産を得たのかとなると、必ずしもそうとはいえない。なんと言っても父は
子供が7人、幼い頃に2人亡くなったので、実質5人、一方小生は1人、
この点では完全に負けている。人間の勝ち負けがあるとすれば、まずは
相手より長生き、相手より多い子孫の数。これしかないだろう。


 昔から男の3道楽には「飲む」「打つ」「買う」というのがあるが、
酒そのものが好きではない。博打などという不愉快ににお金を失う遊び
に頭と時間を使うのは馬鹿らしい。さらに「買う」といったって持って帰
れるわけでもなし、持って帰ればエライことになる。ましてやニセモノの
恋に価値を見いだせない遊び下手ときた。

 オレ人生全部損してるのか・・ 仕事が道楽というのもなんだかなぁ・・