ダマされ続ける男

 先日、久しぶりに P氏から連絡があった。パソコンが
不具合だという。数年前になるが、その時も一度サポー
トした。当時、何か変なことをやってるなと思ったが、
自分とは関わりないし、自分はこのパソコンを正常動作
させればいいだけだ。その変な事とはこういうことだ。

 メールか何かで或る女性から、これが知人なのかどう
かわからない。「先日、主人が亡くなり、多少の遺産を
残してくれたが、自分の歳では持っていてもいくらも
必要ではありません。それよりも生前お世話になった
Pさんに、差し上げたいと思います。なにとぞ有効に利
用していただければ幸いです。」のような連絡をもらっ
たのである。その遺産と称する金額は数億か200億円く
らいとのことだ。普通こんなメールすぐにガセだと分か
る。しかし五年以上も前の話だ。このP氏はその気にな
ってしまったようだ。そのまま貰えるのなら、送金して
もらえば完了であるが、その口座情報のやり取りにチャ
ットのような方法を使う。そのチャットシステム利用料
が何千円だかかかる。それを送金するとチャットが有効
になって、やり取りができるが、いいところで中断する。
 さらに料金を払って、チャットが継続する。というよ
うなことをやっていた。明らかに目的はチャット利用料
の回収である。利用したことがないのでわからないが、
昔のテレホンクラブのパソコン版だろう。相手は女性で
顔も見たといっているが、どうせどこかの美女モデルの
画像と、女に成りすました男がキーボードを打っている
のだろう。

 前述のように「なんか変ですね、おかしくありません
か?」と聞いたが、「いや、大丈夫だ。早く送金しなけ
れば・・」とP氏。それ以上当方としては何も言えない。

 その数年たった最近の話である。前述のパソコン不具
合で至急見てくれという。かなり焦っているようだ。
 つまり現在多額のお金(実際はポイントと言っていた、
数100億円相当)が口座にプールされているがこの口座の
管理費を月末までに送金しないと、口座の金額が全額
没収されてしまう。ところがパソコンの不調で送金処理
ができない。大至急何とかしてくれという依頼だ。

 なんとか先方にはパソコンの不具合の状況を説明し
送金日程を少し待ってもらうようにお願いした。先方は
「P氏には、いつもお世話になっているので、本来なら
没収というルールですが、今回は特別に日程を調整さ
せていただきます。」との許しを得たとのこと。

 そのサイト名は「ksdlkflsksdjkfsdfsd.com」のよう
なデタラメのURLでその時しか使わないようなものだろ
う。ちゃんとした会社なら、例えば sony とか 
toyotaとか会社名がわかるURLを付けるものである。

 「これ明らかにサギサイトですよ。こんなデタラメの
アドレスは普通使いませんよ。」と説明した。「一度で
も入金してもらったことはありますか?」と聞いたら
「一度もない。」という。完璧に はまっているのだ。
 「どうしたらいい」と聞くので、「これまでに支払っ
たお金は諦めて、これからどんな連絡にも一切応答し
ないことにしてください。」といった。

 なにか愕然としたような、納得できないという表情を
浮かべながら、「それなら、何のためにこのパソコンは
あるのだ。」とつぶやく。

 P氏はおそらく不動産のオーナーか何かで、特にお金
に困っているわけではないのだろう、これまでの出費も
自分の裁量の範囲内に違いない。P氏は200億円が自
分のものになるという夢を抱きながら、パソコンを操作
していたのだろう。これを放棄するなら、もうパソコンを
利用する意味がないことになる。

 通算すれば相当の金額を突っ込んだことになるだろう。
そうは言っても徳光和夫氏が「馬」に突っ込んだ金額に
は及ぶまい。徳光氏は「馬」に夢を託しているのだ。


 よく、こういうことがある、このようにある程度長期
にわたってダメなことに金を突っ込んでしまう人がいる。
 適当なところで中止する。つまり「損切り」すべきで
あっても、いままでに突っ込んできたのだから、何とか
その分はリカバリしたいという未練気持ちが、「損切り」
決断を鈍らせる。

 先日M子様とKK君が結婚したとの報道があった。よく
考えてみればKK君は米国で3年間の留学をして勉強、さら
っというが、その資金はどこからでたのか?どう考えても
お母さんはあの状態、元婚約者ともこじれているので
この元婚約者からは出るわけがない。本人はたった
400万の工面さえできない。しかし3年の留学ともなれば
400万くらいの金額で済むわけがない。友達もスポンサー
もいなさそうなので、残るとすればその資金を出したのは
M子様か? ここまで突っ込んできたのだから、ここでやめ
たら、これまでの私の人生の意味は何だったの?
 ということにならなければいいのだが、何はともあれ
幸せになっていただきたいと願うばかりである。