バカでもできる成長する企業経営

 小生がパソコンショップを始めたころは夢と野望にギラギラ燃えていた。大量にパソコンを売って店を大きくし、やがて全国展開・・ などというイメージを描いていた。実際はそうはならず、今の今まで、いつ墜落するか分からない低空飛行のままである。そうこうしているうちに「事業継承」や「M&A」などのダイレクトメールが届くようになってきた。

 さて、最初に述べたように企業を大きくする方法は比較的簡単である。バカでもできると言ったら言い過ぎだろうか?

 方法は次の通り

(1)まずは掛けで問屋からパソコンを100万円分仕入れる。この100万は借金とする。
(2)とりあえず利益なしで100万円で売りにだす。
(3)もともとの原価だから他社より安く、安ければパソコンはその月のうちに全部売れる。
  そこですでに100万円の現金は手元にある。あるいは借金返済してもいい。
(4)次の月 今度は110万円分のパソコンを仕入れる。同じく、まったく儲けなしで110万円分を売り切る。その月の問屋への支払いは先月分の100万円だから売り上げた110万から支払えば、10万は残っている。

 毎月徐々にではあるが10万円ずつ商売を拡大していけば、まったく儲けがない商売をしても企業は回転できる。細かいことを言えば、社員の給与や家賃などの経費は掛かるが、とりあえずここは省略して考える。
 というビジネスモデルを考えた。売上規模が毎月大きくなることが確実ならばバカでも企業は成長できる。
 例えば、次々と店舗を拡大していった「いきなり・なんとか」とか、店舗を拡大し続ける限り成長しているかたちになるのだが・・


 当たり前だがここでのパソコンとは段ボール箱に入った物品であり、箱のまま倉庫センターからお客様に送られる。申し訳ないが使い方や説明サポート、あるいはお客様の希望に応じた製品を提案するなどソムリエのようなことはできない。そうなると箱に入った物品ならば何でもよく、家電、ゲーム機、化粧品であってもいいとなる。もはやパソコン屋であるかどうかはどうでもいい。なんとかカメラ社がすでにカメラ以外の製品取り扱いがはるかに多いようなものだ。

 バブル時代の不動産商売も簡単だ。なんでもいいから買える不動産は借金してでも買う。買っておけば半年もすると価格が上がり1000万で買った物件が1200万になっている。1200万の物件を担保に1200万円借金をし、別の物件を購入。1200万で買ったものが半年後には1500万に値上がり。こうなると「どうにも止まらない」、山本リンダ状態になる。(古い! 古すぎる!)

 中国ではさらに過激だ。マンションを作り完成前、もちろん引渡し前に販売、その代金を回収し、その金で、次の投資物件に取りかかる。時として、工事会社への支払いが滞るので工事が完了できずに顧客に引き渡しができない、あるいは大幅に遅れることがある。顧客としては多少遅れても、資産価格が購入時より上がっているので、さほど文句はいわない。あくまでも成長していればという前提である。すでに中国全人口以上の住宅ができているという。世界中の難民を受けれてくれるなら人類にとってうれしい話なのだが・・

 企業が確実に成長し、市場も確実に拡大するという前提であれば、経営は難しくはない。
 ところが日本でのバブル崩壊では痛い目にあった人や、あの世に逃避せざるを得なくなった不幸も多数生じたのである。

 これまで毎年7%以上の成長を遂げていた中国経済はその流れが永久に続くという前提であればバカでも成長できたという実績を作ってきた。しかし、成長が止まり、平行線または下降線に入ると、このビジネスモデルは全力で走っている列車が壁に激突するように急ブレーキがかかり、破綻するのである。想定した入金が想定の半分しかない。借り入れもできないとなれば、今月末の支払いに全然足りない。どうする。とりあえず手持ちのお金を持って、ドロンする。さらには海外に逃亡する。後のことは「知らぬ」の一点張り。

 デフレ時代、成長の止まったあるいは減速した経済状況で、しっかりと経営を続けているとしたら、それだけで立派な経営者だろう。商売で、適正な利益をあげ、社員の給与や研究技術開発に上手に予算を振り分け、それでも徐々に成長しているとしたら大したものである。

 デフレマインドとして「何が何でも安く、コスパ至上主義」では本当の意味での健全な成長はできない。

 自分のパソコン販売方法としてはソムリエのようにお客様のご希望に添えるようスペック、価格両面からベストの製品を提案させていただいています。「ダイナックスに頼めば間違いない。」という信頼関係ができていれば幸いである。逆にこちらとしては売った製品が故障せず、希望以上の働きをしてくれることを願っている。いくら価格を安くといわれても、小生の考える一定水準以下の製品は売りたくないという矜持はあるのだ。ということで、価格比較サイトのペーパー持ってきて、「ここからいくら値引きできる?」というお客様には・・・・ 「ウヒャー! 勘弁してくださいよ、お客さんも冗談がきついっすよ! ギャハハハ。」と陽気にに返す人間だったら、もしかするとこの会社も、少しは大きくなれたかもしれない。実際は・・ 沈黙が流れ、気まずい雰囲気になるのであった。