僕の付き合ってきたJBL その2

小生 趣味がオーディオで、仕事がパソコンである。
どちらも好きには違いないが、好きな物を手にしたい
という趣味と、仕事用となると紺屋の白袴のごとく売
れ残りのあり合わせで自分用のパソコンを構成する。
 ゲーマーのように高額なグラフィックボードにはま
ったく興味がない。通常の仕事用ソフトを利用してい
る限りは、このグラフィックボードなるものは全く意
味を持たないのである。

 オーディオ業界でJBLといえば、知らない人はい
ないスピーカのトップブランドである。今年創業75
周年だそうだ。このメーカーの歴史については、ここ
では述べないが、小生が手にした、つまり付き合って
きた製品について、思い出をたどってみたい。それぞ
れに思い入れを込めて付き合っていただけに、昔の恋
人の話から自分の内面をさらけ出すようで少々恥ずか
しい気もする。

LE−8T
 20センチ口径の代表的なフルレンジでオーディオフ
ァンなら知らぬ人はいない。小生の兄は小生が国立大
学に合格したら賞金を出すといっていた。オーディオ
に興味を持っていながらラジオしかない高校生が何を
欲しがっていたのかはお見通しだったのだろう。なぜ
我が家にはステレオがないのかと思っていた。当たり
前だがステレオとは左右一対のスピーカから音が出て
それを左右の耳で聴き、楽器の位置や微妙な位相の変
化で広がりや奥行きまでも再現する音響システムであ
る。後になって気づくのだが、父は音楽は好きだが若
いころの中耳炎のためか右耳がよく聞こえないらしい
片耳しか聞こえないので、ステレオの立体感は感じら
れず常時左耳のモノラルなのだ。だからウチにはステ
レオがないのだ。つまり不要なのだ。

 話がそれたが、賞金は学費が私立と国立では圧倒的
に差があり。その差額を考えたらリーズナブルなもの
だったのだろう。めでたく国立に合格した小生は賞金
をゲット、いよいよステレオたるオーディオの世界に
一歩踏み出すことになった。初めに買ったのがこの
LE-8Tである。自分のステレオもないのにオーディオ
雑誌を読み漁り、いわゆるオーディオの耳年増状態、
 実戦を知らないのに、文字情報にはやたら詳しい。
 まさに恋の道を語るチェリーボーイのようなものだ。
 まずはJBLは最高である。しかし高額である。
なんとか買える金額のJBLとなるとLE-8Tになる。
 だいたい同等の国産機の二倍以上の価格。
 本機はスピーカユニットなので、使用するには箱が
必要だ。この箱をどうするかが自作マニアには楽しみ
なのである。
 当時は、故長岡鉄夫氏が雑誌でバックロードホーン
型エンクロージャーが小口径のスピーカでも低音再生
に有利とのブームがあった。御多分に漏れず小生もこ
れに乗り、最初に作ったのが特殊な形のバックロード
ホーンである。まず、一言言っておくが、小生は、提
供された図面とおり、あるいは完成された物の完コピ
などには興味がなく、なにか今までにないものを作り
たいという傾向がある。図1は、下部のホーン開口部の
センターが三角状になっており、クリプッシュ社の業
務用スピーカに似た形を雑誌で見ており、「かっこい
ー」と思っていた。再生される音は何か今一つなので
あった。本来このLE-8Tはコーン紙はやや重く、フリー
エッジで大振幅をとれるタイプで実はバックロードホー
ン箱には向いていないと後から気付くのであった。
 ホーンにより低音は増強される。さらに使用するア
ンプはラックス社の管球型 SQ-38FDである。クラシッ
クに向いた柔らかい音が特徴。低音が膨らみ中音は控
えめになり、シングルユニットとしては高域が伸びて
るわけでもない。さらにこのアンプなので、シャキッ
とした音は出なかった。その後、アルテックA7の小型
版のような箱、38センチ大型スピーカを導入する前提
のオンケン型ウルトラバスレフにこの20センチ口径の
スピーカを暫定的に使用したりした。ほかにトリムラ
インのような薄型箱にドロンコーンも試したが、出て
くる音に大きな変化はなく、これは比較的ゆったりし
た容量のバスレフがベストであろうと結論付けられる。
 つまりサンスイ SP-LE8Tが究極なのだろう。

 ちなみに10年くらいほっておくとこのウレタンエッ
ジはだいたいボロボロに崩壊する。これには例外はな
い。知人のオヤジが言っていた。「永瀬さん、いく
ら高級なタンノイだってだめだよ、エッジがボロボロ
になるんだから。」と嘆いてた。久しぶりに履いた
一張羅の革靴が歩き始めると靴底がボロボロと崩れて
くることがある。これがウレタン底である。靴の専門
家に言わせれば、ウレタンと湿度でそうなるらしい。
 つまりウレタンエッジのスピーカは湿度の高い日本
では崩壊を避けられないのだろう。小生はそれ以降の
スピーカは必ずフィクスドエッジと決めている。



JBL LE-8T
20センチ口径だが 意外に低音が出る。高い方は真正面で聴けば多少マシだが、ツイータを追加するのが望ましい。
(図1)

最初に作ったLE-8T用バックロードホーン箱。内部は縦に3分割されており音道はスピーカ背面から下に下り、折り返して上に上がり左右の音道に分かれて下に下り、正面で合成される。高さ90cm
ヒマだったのだろう。よくこんなものを作ったものだ。

図2
高さ60cm フロントホーンは憧れのA-7から。一生懸命曲面を作りました。出てくる音は、悪くないけど、こんなものかなぁ。ユニットを取り外されたこの箱は台所で醤油ビンの収納箱になってしまった。何しろ頑丈なので上に何でも置ける。

オンケン型ウルトラバスレフ
高さ90cm
38センチ大型スピーカのために作成した。図の点線部の穴をあけると38センチスピーカが取り付けられる。しかし、まだ買えないので20センチのLE−8Tを取りつけて使用。このユニットには大きすぎる箱。かなりいい低音がでる。

ドロンコーンを使用した薄型箱、ドロンコーンが効いているのか、効いてないのかよく分からん(笑)