僕の付き合ってきたJBL その4

 130A D130

 38センチフルレンジとしてあまりにも有名なD130
しかし最初に手にしたのは、これをウーハー用にした
130Aである。前述の375/HL-89のセットで購入したのだ。
中音が375なので、比較的低めのクロスオーバーが使え
る。ウーハーは上のほうは出なくてよい、という点か
ら130Aとした。違いはD130がセンターアルミドームに
対し黒い紙ドーム、ボイスコイルがアルミに対して銅
になっている。コーン紙そのものはほぼ同じなので、
実際には音としてあまり差ははないだろう。D130はフ
ルレンジとはいっても、ほとんどモゴモゴした音で
とうていこれ一発では聴くに堪えない。

 さて、箱だが予定としては前述のオンケン型ダブル
バスレフの箱に入れるつもりだった。しかしこの前の
段階で、当時の実家が火災になりLE-8Tの入ったオンケ
ン型箱は焼損してしまった。木造二階にあったこの箱
強度、重量もあり、家屋の延焼に伴い二階の床が焼け
落ち、一階に落下した。一階にあった姉の洋服ダンス
を紙屑のごとく押しつぶし破壊したのだった。
 つまり、実家が復元するまでは、嫁入りした姉の家
でお世話になったり、その後近所の事務所で寝泊まり
するなど、オーディオどころではないのであった。
1-2年くらいはオーディオ機器でJAZZを聴くことがで
きないという寂しい時期をすごしたのである。
 そんなときに街に流れていたのは山口百恵の「横
須賀ストーリー」であった。JAZZや洋楽POPSが好き
だった小生は歌謡曲には興味がなかったが、この
「横須賀ストーリー」の間奏に流れるサックスソロは
JAZZに飢えていた当時の小生にはたまらないものを感
じさせた。知らぬ間に山口百恵を好きになっていた。
 デビュー当時は新人なりの歌い方だったが、中盤か
ら後半にかけては、今聴いても感動する歌の上手さ、
当時の彼女の年齢を考えれば本当に驚く。
 おそらく、一般の人はテレビやラジオで流れる彼女
のつまりシングルカットされた作品しか知らないかも
しれないが、アルバムを聴くとどの曲も素晴らしく、
アルバム購入の満足感はある。たいていの人は知らな
い「プレイバック パート1(ワン)」という曲もある。

 話がそれたが、この130Aの箱はその能力を最高に発
揮できるものにしたいという入魂の一作となる。
 我々世代のオーディオマニアにとっての最高のスピー
カとは、タンノイ オートグラフ、JBL ハーツフィー
ルド、パラゴンだ、アルテックならばA7やA5である。
 大型スピーカでコーナーホーン、フロントホーン
などがあこがれの対象だ。最近の細長いスピーカで16
-20センチの小さなウーハーがついててベンツが買え
るような高額の製品があるが、申し訳ないが興味が持
てません。
 オートグラフは、とてもじゃないが素人に毛が生え
た程度の技量では制作不可能。A7はフロントホーンは
いいが、箱の中はがらんどうで、バスレフとは言えな
いようなフロント下部の間抜けな解放ダクト・・重低
音は無理だし。
 ということで、フロントショーホーン付きバックロ
ードホーンかつコーナーホーンという全部のせ状態を
欲張ってしまった。
 JBLのバックロードホーン箱といえば代表選手として
ハークネスがある。サンスイでもSP-707Jという型式
で相当するシステムがあった。
悪くはない、悪くはないが小生どうしても気に食わな
いところがある。それは正面下部のホーン開口部から
出てくる音だ。もちろん低音が出てくるのだが、なに
か汚いような、いわゆる「ゴーゴー」するような付帯
音が気になる。そこで開口部は背面にし、箱を部屋の
コーナーに置くことで壁がホーンの延長となる。つま
りコーナーホーンを形成する。箱の開口部からの音を
ダイレクトに聴くのではなく、一度コーナーにぶつけ
るため、コーナーの壁状態にもよるが、余分な付帯音
は大幅に軽減され、「ゴーゴー」は消える。
 はこのオリジナル箱の構造図である。CW型つ
まり一定幅の箱なので、設計組み立ては比較的容易で
ある。スピーカ背面からの音波は一度上に上がり、
背面に移動、さらに斜め下に降りたのちに底部から背
面の開口部につながる。
 本番となる130Aの前に20センチ口径のコーラル社ベ
ータ8
を取り付けた小型版の箱を作った。音道の形状が
蛇が鎌首を持ち上げた形なのでCobraと名付けた。
38センチの大型箱はKing Cobraとした。

 背面開口部近くのサイドパネルには切り欠きを入れ
てコーナーから十分な音圧が左右横に放出されるよう
にした。フロントにはショートホーンを付けた。ある
程度の音量を上げても、正面のスピーカ部ではほとん
ど振幅がなく、低音も出ていない。ところが背面開口
部近くに移動すると、低音がきちんと出ている。ホー
ン長はコーナーホーンを考慮すると約3メートルになる。

 バックロードホーンの欠点としては、低域がこの長
さのホーンから放出されるため、若干の音の遅れが生
じる。このため、聴いた印象としては、フワリと柔ら
かい低音となる。これだけ聞いていたらわからないが、
バスレフ箱のウーハー直接音と比較するとダイレクト
の低音は引き締まってガチッとしたように聞こえる。
この辺は好みであろう。
 短いながらもフロントのショートホーンは効いてい
るのかどうかはよくわからない。しかしコーン紙の横
に逃げようとする音圧をあくまでも前に押し出す効果
はあるはずだ。
 何はともあれ測定器も無響室もない素人の趣味人が
耳だけを頼りに作ったものだ。耳頼りといったが実際
はどんな音になるのかは、設計製作段階では全く見当
はついてない。つまり、あてずっぽうという方が正し
いだろう。ユニットを取り付けて音出しした瞬間に、
それまでの肉体疲労が報われるべきという流れから、
れなりに「サイコー!」と満足、納得させているのかも
しれない。部屋にたっぷりと広がる低音、厚みがあっ
て明瞭な375ドライバ+ラジアルホーンの中音、075の
プロ用2402のやはり厚みのある高音。これ以上なにを
求めるというのだ。

 こうしたJBLスピーカと一般的なスピーカと何が違
うのかという件だが、同じ音源を聴いてもその音の濃
さが違う。芝居に例えれば通常のスピーカが、テレビ
ドラマで自然な演技をする役者だとすれば、JBLスピ
ーカはいちいち見得を切る歌舞伎役者のように「これ
でもか」という音を届けてくれる、だから一度聴いた
だけでもお腹いっぱいになるという満足感があるのだ。

 ついでといっては何だが、しょせん130Aなので30Hz
以下の重低音は期待できない。そこでスーパーウーハ
ーにのヤマハYST-SW1000を追加しているが、これを起
動すればそれなりに16Hzまで伸びるようだ、しかしこ
れはあってもなくても、その魅力は変わらない。


 しかし、この部屋、わが愛娘に占拠されている。


130A 浅いカーブドコーン薄く軽量のコーン紙フィクスドエッジなので劣化がない。

・・・




20センチ口径のコーラル BETA-8用に作成した物、高さ90センチ。お見苦しい汚れはご容赦くだされ。背面下部にホーン開口部があり、コーナーに設置して、壁との距離を調節することで低音を調整できる。
 細めのボイスコイルで高域がよく伸びたスピーカではあるが、ダブルコーンのクセなのか何か紙っぽいシャラシャラした高音がいまいち好きではなかった。実機を聴いたことはないが、ほぼ同型のローサーやVoxativなどの再生動画を見るとやはり共通した高音のシャリ音がしているように感じた。

こちらが箱の内部構造

現在の構成
130A, 375, 2350ホーン
2402 ツイータ(075相当)
箱の高さは120センチ

コーナー設置で低音にはゆとりがある。

こちらが箱の内部構造